不妊治療のステップでタイミング法の次にやってくるのが「人工授精」です。
比較的コストがかからず、自然妊娠に近い方法なので、できれば人工授精で妊娠したいという思いが強いと思います。
果たして人工授精はどのくらい期待できる治療法なのでしょうか?
人工授精で妊娠できる確率は?
男性不妊でも人工授精で妊娠できる?
男性不妊で妊娠可能な精子レベルは?
といった疑問にお答えします。
人工授精に適正がある人
人工授精は濃縮した精子を子宮内に直接流し込む方法です。このような方に適性があります。
抗精子抗体がある
性行為がとれない、苦手
膣内射精できない
軽度の男性不妊
女性側に特段大きな問題がなく、自然妊娠が可能であることが最低条件になります。
タイミング法でなかなか妊娠できない
排卵日が特定できているにも関わらず、なかなか妊娠できないという場合です。
原因不明の不妊の場合にも用いられます。
抗精子抗体がある
血液検査やヒューナーテストで抗精子抗体が判明した場合、早い段階で人工授精を行います。
頸管粘液に抗精子抗体があると、子宮内に精子がたどり着くことができません。
性行為が苦手、タイミングがとれない
そもそも性行為が苦手であるという場合や、タイミングが合わずどうしても性行為が行えないという場合です。
この場合、自宅でできる「シリンジ法」という手段もあります。
膣内射精できない
EDや射精障害により膣内で射精できない場合は人工授精を行います。
軽度の男性不妊
精子数が少ない、元気がないなど、軽度~中程度の乏精子症や精子無力症の場合に適正があります。
男性不妊で人工授精した場合、妊娠できる確率は?
WTO正常値 精子濃度1500万/ml、運動率40%以上
人工授精可能下限値 精子濃度1000万/ml、運動率40%以上
人工授精は、精子濃度が約500万~3000万/mlであれば一応対象内に入りますが、精子濃度が1000万/ml以下、運動率40%以下の場合、極端に成功率が下がると言われています。
ただし、一部の論文によると最悪100万/ml以上あれば妊娠可能とも報告されています。
まれにですが、洗浄後に動いている精子の数が10万/ml程度でも妊娠する方はいらっしゃるそうです。
運動率が低くなければ、精子濃度がかなり低くても人工授精で妊娠できる可能性はあると言えます。
妊娠できる確率
【男性に問題がない場合】
人工授精1周期あたりの妊娠率は5~10%となっています。
ちなみに30代前半の自然妊娠の確率は15~20%です。
比較すると、男性に問題がない場合でも、人工授精の成功率はとても低いということが分かります。
【男性不妊の場合】
精子濃度や運動率によっても変わると思いますが、上記の数値を踏まえて総合的に見てみると、男性不妊で人工授精した場合の妊娠率は1~5%程度ではないかと推測されます。

ほんの一握りなんですね。
人工授精の辞め時
人工授精を4周期以上行った際の累計妊娠率ですが、40歳未満で約20%、40歳以上で10~15%となっています。
つまり、80%以上の不妊患者が人工授精では妊娠が難しいのが現実です。
妊娠が確認された患者のうち88%が4周期以内でした。(日本産科婦人科学会HPより)
このため、多くとも4~6周期をめどに体外受精などにステップアップする方が多いようです。
まとめ
はっきり言って人工授精の妊娠率は5~10%とそれほど高くありません。
となると、男性不妊の場合はなおさら簡単には妊娠できないというのが現実です。
男性不妊で人工授精の成功率を高めるためには、精子濃度と運動率UPを試みることが必要です。
しかし、精子は3か月のサイクルで作られているので、時間がかかるし、どこまで改善されるかは個人差が大きいため正直やってみないとわかりません。
年齢的に余裕がないという方は、人工授精の回数を1~2回までと決め、早めに次のステップに進むことが望ましいと言えます。
・コストを抑えたい
という方は、最高6回をめどに人工授精にトライしてみることをおすすめします。
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